2014年5月16日金曜日

ホリー、警察へゆく

昨日の夕方、いつものようにホリーと散歩に出かけた。コースはいつも決まっているわけではないのだけれど、その日は小川沿いの小道を歩いていた。

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ホリーは、道路の上よりはこういう道が好き。私もそうだけど。

すると、川の中をサンダル履きでばしゃばしゃ渡って来る 3 人の女の子たちがいる。

まだ水は冷たいだろうに、子供は元気ねぇ、と呑気に眺めていたら、中のひとりがまっすぐ私の前にやってきた。

「あの、きいてもいいですか?」

ひどく真剣な顔をしている。

「なんでしょう?」

「川の中に消火器が捨ててあるんですけど、どうしたらいいですか?」

彼女たちの指さすほうを見ると確かに、水中に赤いものが落ちている。

「えっと・・・・・・」

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ほんとうに、どうしたらいいんでしょう。

「ゴミを管理している人か、川を管理している人に連絡するんでしょうかね・・・」

そんな人にはどうやったら会えるのか。

「あれは、昨日からあって」

「昨日も、おまわりさんに言いに行ったんですけど」

「でも私たちが行ったときに丁度自転車で出て行っちゃって」

3 人の女の子たちは矢継ぎ早に話し出した。

「警察、この辺にあるんですか?」

じゃあ、一緒に行ってみましょうか。ということになった。

私は、川沿いの道は散歩で良く歩くけれど、まだ引っ越して 3 年にしかならず、しかも住んでいるところからは結構離れているので地理には疎い。(それでなくても、方向音痴だし。)

女の子たちに案内されて歩きはじめた。

彼女らは、小学 4、5 年生の姉妹とその友達で、みんなとっても可愛い。

ホリーにひどく興味を持ったようす。

「名前はなんていうんですか?」「なんていう犬なんですか?」

「穴掘りが好きなホリーって言うの」「雑種なの。おうちがなくてひとりぼっちでいたところを助けてくれた人がいて、うちにやって来たの」

「芸はできますか?」 ときらきらの瞳で見上げてくる。

それでは、と道の端でお座りをさせて、わんこビスケットを投げて空中キャッチするという芸を披露すると、くちぐちに「すごーい」と感心してくれた。練習しといてよかったね。

やってみたいというので、3 人にビスケットを半分ずつ配って、1 人 1 人チャレンジした。1 回しか成功しなかったけど・・・。

でも、可愛い、可愛い言っていっぱい撫でてもらった。ホリーは、基本無愛想なので反応は薄いんだけど。

女の子って話し出すと止まらない。姪の優ちゃんがこの年頃だったころもそうだったなぁ、と微笑ましく思い出す。

昔飼っていた犬の話、足の速いお兄ちゃんの話、学校で消防署に行った話。

「あそこの茶色いのがこの子の家なんです」

あっけらかんと教えてくれるので、笑ってしまう。

「知らない人に住所教えちゃダメだよー」

「あっそうか」

なんてやりとりもありつつ。

大きな道路に出て結構歩いた。

女の子たちは駈け出したり飛び跳ねたり。愛想なしのホリーも、女の子たちが先にいってしまうと追いつこうと走りだしたり。結構楽しそうじゃん。

最初、私は交番が近くにあるのかな、と思っていたのだけれど、彼女らの目指す方向を見ていると、何度か前を通ったことのある、結構大きな警察所に行くつもりなのでは。と、なんとなく予想がついた。

たどりついた先は、某神奈川県警。

立派な門構えに内心少々威圧される。警察署に入るの、私もしかして生まれてはじめてじゃないかな。

「いままでにも、何度も落し物届けたことがある」 と、少女たちは落ち着いたもの。

そうかー。みんないい子なんだなー。

私は、彼女たちに会わなかったら、川の中に消火器があっても「いやだなぁ」と思うくらいで素通りしていたと思う。と、いうか、確実に素通りしたよね。

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でも。あんなホリーにも負けないくらい純粋な瞳で「どうしたらいいでしょう」と訊かれたら、普段いい加減な私であっても、なんとかしなければと思ってしまう。

おとなに対する期待を、裏切りたくないものね・・・。

お姉ちゃんがホリーを見ていてくれるというので、リードを木につながせてもらって、ポケットの中のわんこビスケットの残り 5 個くらいを全部を渡し、彼女とホリーを残して妹ちゃんとお友達に先導されるように警察署に入って行った。

制服のおまわりさんが大勢いる (あたりまえ)。落し物のコーナーは窓が閉まっていて、どうしようね、と話していたら、通りすがりのおまわりさんが「どうしました?」と声をかけてくれた。

「川の中に消火器が捨ててあるんですけど、どうしたらいいでしょう」

さすがのおまわりさんも、少々面喰っていたかな。

持ってきてくれた地図で場所を教えた (少々手間取ってしまったけれど、女の子たちが、近くにあった橋の名前をおぼえていてくれた)。回収してくれるが、場合によっては廃棄できない可能性もあるとかなんとか。念のためと、住所をきかれたので代表で私が連絡先を教えておいた。

「ご家族ですか?」

「いえ、犬の散歩の途中に声を掛けられて」

「それはそれは」

おまわりさん、笑ってた。

よろしくお願いしますね、と頭を下げて、お姉ちゃんとホリーのところに戻った。

お姉ちゃんは、「ホリーがお手してくれた!」「マテもできた!」と興奮気味だった。

大きな交差点の前で、ホリーがみんなと握手してばいばい。3 人の女の子たちは、現れたときと同じく、風のように去って行った。

思いがけず、長くて賑やかなおさんぽになってしまった。

ホリーと歩いていると、いろんなことがあるなぁ・・・と思った。

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今朝、おなじさんぽ道を通ってみると、赤い消火器はまだ昨日と同じ水の中にあった。

おまわりさん、きっとお忙しいでしょうが、できればあの女の子たちが学校終わって見にくる前に、回収してくれるとうれしいなぁ・・・。

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